スマートフォンの通知、SNS、マルチタスク。
現代社会は、私たちの集中を絶えず奪う刺激にあふれています。
そんな中で注目されているのが、「集中力(注意力)」です。
集中力は、学習や仕事のパフォーマンスだけでなく、心の健康、そして人間関係の質にも深く関わる、まさに“脳の基盤”といえる力です。
集中力とは何か?なぜ今それが大切なのか

集中力とは、関係のない情報を遮断し、必要なことに意識を向ける脳の働きです。
しかし単なる「頑張って集中する」ことではなく、私たちの認知機能全体を支える脳の司令塔のような存在です。
日常の中で集中力が発揮される場面は多くあります。
- 学生が試験勉強に取り組むとき
- ドライバーが複雑な交通状況で判断を下すとき
- ビジネスパーソンが会議で議論に集中するとき
- 親が子どもの話を真剣に聞くとき
どのシーンでも、集中力が欠けるとミスが増え、理解力や生産性が落ち、人間関係にも影響を及ぼします。
集中力は「ひとつの力」ではない
集中力にはいくつかの種類があります。 それぞれの特徴を知ることで、自分や生徒、利用者の課題をより正確に把握できます。

持続的集中力
長時間にわたって注意を維持する力です。
たとえば1時間本を読むとき、長いプレゼンテーションに耳を傾けるとき、詳細なプロジェクトを完遂するときに不可欠です。
持続的注意力によって、私たちは気が散ったり興味を失ったりすることなく、課題に取り組み続けることができます。
絶え間ない通知や中断が日常となった現代社会では、持続的注意力を維持することがますます困難になっています。それでもなお、深い仕事や学習、複雑なスキルの習得には不可欠な要素です。
選択的集中力
多くの刺激の中から重要な情報だけを選び取る力です。
特に特定の刺激や課題に向けられる注意の強度を指します。特に注意散漫な環境下での質的な集中力を意味します。
選択的集中力により、外科医が精密な手術を、音楽家が複雑な曲を、学生が騒がしいカフェで情報を吸収することを可能にします。これは、その瞬間に最も重要な事柄に焦点を絞る能力です。
抑制(インヒビション)
誘惑や衝動を抑えて、注意を保つ力です。
重要な会話中に通知音が鳴っても無視したり、締切作業中にSNSをチェックしたい衝動を抑えて作業を続けられる人は、この能力が高いといえます。
この注意制御は認知的な門番として機能し、無関係な情報が集中を妨げるのを防ぎます。強い抑制制御は、意思決定の向上、衝動性の減少、感情調節能力の向上と関連しています。
分割集中
「マルチタスク」を処理する力です。
分割集中は複数の入力を監視しなければならない時に、精神的なリソースを効率的に配分することを可能にします。
夕食を作りながら宿題を見守る親や、様々なプロジェクトの構成要素を追跡するチームリーダーは、分割注意が実際に機能している例です。複雑なタスクには理想的ではありませんが、このスキルは多くの日常的な状況で価値があります。
集中力の危機:デジタル社会がもたらす影響

引用元:スマホを1日何時間使っている?意識と実態に3時間差「スマートフォン利用に関する生活者実態調査」 公開
平均的な人は、1日にスマートフォンを50回前後(持ち上げ回数で見れば約52〜56回)チェックしているという調査があります。頻繁な「注意の切り替え」は認知的な負荷を高め、心は疲れているのに深い集中ができないという悪循環を生みます。 1)また、注意機能に課題を抱える人も増えています。
日本では、学童期の子どものうち 約3〜7% が注意を持続することに難しさを感じやすいとされ、成人でも同様の傾向がみられるとの報告があります。2)
集中力を保つ力は、今や多くの人にとって日常生活や仕事の中で重要なテーマとなっています。
臨床診断を受けていない人でさえ、過度に刺激的な現代環境において注意力に苦労することがあります。
テクノロジーで「集中力」を見える化する
かつては専門機関でしか測れなかった脳の注意状態を、今では手軽に測定できる時代になりました。
Neeuroでは、EEGヘッドバンド「SenzeBand 2」を開発しました。これは注意状態を含む脳活動をリアルタイムで測定可能です。³
学習、仕事、トレーニングなど、さまざまな場面で自分の「今の集中状態」を把握できるのです。
持続的注意力が最適である時と衰え始める時を可視化したり、集中力のピーク状態を達成しつつ注意散漫を抑制するのに効果的な活動を理解したりできるようになります。
集中力を客観的に測ることができることは、メンタルウェルビーイング(心の健康)を科学的に高めるための大きな一歩です。
脳は鍛えられる:メンタルトレーニングの可能性

筋トレで体を鍛えるように、集中力もトレーニングで強化できます。
Neeuroのデジタルアプリ「Memorie」と「Cogo」は、脳の可塑性を活かして、集中力を段階的に高めるよう設計されています。
- 持続的集中力のトレーニングでは、少しずつ集中する時間を延ばしていき、時間をかけて「集中する持久力」を育てます。
「Memorie」では、集中し続ける時間や課題の長さが徐々に伸びていき、自然と集中力が鍛えられます。
- 選択的集中力のトレーニングでは、周りに注意をそらす要素がある中で、どれだけ集中を保てるかに挑戦します。
「Cogo」のゲームでは、音や映像の“気が散る仕掛け”が増えていく中で、正しく反応する力を養います。
- 抑制力のトレーニングでは、つい反応してしまう衝動を抑え、意識的に行動を選ぶ練習をします。
たとえば、目立つ刺激をあえて無視し、指定された刺激だけに反応するような課題です。
さらに、SenzeBand 2と連携することで、リアルタイムの脳波データに基づいた個別最適化トレーニングを実現します。
Duke-NUS 医科大学やシンガポール精神衛生研究所との共同研究により、当社の技術を用いた定期的なトレーニングセッション後、持続的注意力と衝動制御(抑制)に変化が認められています。⁴
誰でもできる「集中力トレーニング」
Neeuroの脳トレーニングは、以下のような人に役立ちます。
- 学生:学習効率の向上
- ビジネスパーソン:生産性アップとストレス耐性の向上
- 高齢者:加齢による認知機能低下の予防
集中力を鍛えることは、心の健康を整え、人生の質を高めるための新しい習慣です。
集中力は「未来の健康習慣」

これからの時代、身体を鍛えるように「脳を鍛える」ことが当たり前になるでしょう。
集中力を中心としたメンタルフィットネスは、次世代の健康管理に欠かせない要素です。
Neeuroは、その最前線で「科学×テクノロジー×楽しさ」を融合し、
誰もが自分の脳を理解し、整え、成長できる社会を目指しています。
より良い注意力への道は、気づきから始まります。一日のうちで自分の注意力のパターンに注意を向けてみてください。最も集中できるのはいつですか? どんな気が散る要素が最も影響しますか? 次に、テクノロジーと体系的なトレーニングが、こうした基本的な認知能力を高めるのにどう役立つかを考えてみましょう。
集中力は、あなたの最も貴重なメンタル資源です。
それを育てることが、健康で豊かな人生への第一歩となるでしょう。
References
- スマホを1日何時間使っている?意識と実態に3時間差「スマートフォン利用に関する生活者実態調査」 公開
- 国立精神・神経医療研究センター(NCNP)
- Neeuro. (2025). SenzeBand 2: EEG Technology for Brain-Computer Interface Applications. Neeuro White Paper Series.
- Institute of Mental Health, Duke-NUS Medical School, A*STAR and Neeuro. (2019). Pilot Home-Based Brain-Training Game to Help Children with ADHD. Duke-NUS Medical School.
翻訳・ローカライゼーション Misaki Ikemoto


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